Nature ハイライト
がん:過剰なBCRシグナル伝達の抗がん作用
Nature 521, 7552
B細胞の正常な選択過程では、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達の強度が中間レベルになるように選択が行われ、そのために中間的なレベルのBCRシグナル伝達活性を持つB細胞が選ばれやすい。M Müschenたちは、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達が恒常的に活性化している一部のB細胞悪性腫瘍、すなわちBCR-ABL転座を有する急性リンパ芽球性白血病では、正常な選択過程に調整を加えて、悪性B細胞が生存できなくなる閾値を超えるようなBCRシグナル伝達を誘導してやることが可能かもしれないと考えた。そして、SYKキナーゼの過剰活性化によってこれが達成できることを明らかにし、その一例として、マウスモデルの1つでSYK経路の薬理学的な活性化が患者由来の腫瘍異種移植片の増殖を低下させることを示した。こうした考え方は、Bリンパ腫の治療法としてBCRシグナル伝達を阻害する手法とは全くの別物なので、臨床で検証する価値があるだろう。
2015年5月21日号の Nature ハイライト
幹細胞:新たな幹細胞状態
神経科学:ドーパミン輸送体の構造
天文学:3つのIa型超新星は白色矮星同士の合体によるものか?
量子力学:エンタングルした重ね合わせ状態の生成
材料科学:非ジュール磁気ひずみが観測された
進化遺伝学:転写のノイズが自然選択の対象になる
幹細胞:iPS細胞の潜在能力の有無を示す細胞マーカー
がん:過剰なBCRシグナル伝達の抗がん作用
エボラウイルス:現在のエボラ流行株に対する治療
分子生物学:昆虫および脊椎動物での段階的スプライシング