Nature ハイライト
宇宙化学:天の川銀河に発見されたフラーレンC60
Nature 523, 7560
リック天文台の天文学者M L Hegerは1919年に、「拡散星間バンド」と呼ばれるものを初めて観測した。拡散星間バンドは、赤化した星の方を見た時に観測される吸収線で、今では数百の拡散星間バンドが知られているが、それらを生じることがはっきりと分かっている分子はこれまで1つもない。1994年に、B FoingとP Ehrenfreundが、ネオンマトリックス中で測定したフラーレンC60+の吸収バンドの波長に近い2つの拡散星間バンドを報告した。しかし、確認をより確実にするために、C60+の気相スペクトルが待ち望まれていた。今回J Maierたちは、C60+の気相スペクトルの実測値を提示し、FoingとEhrenfreundが観測した拡散星間バンドが、C60+から生じていることを確証している。C60はすでに赤外線スペクトルの検出によってさまざまな星雲で見つかっており、天の川銀河でのC60+の存在を裏付ける今回の結果によって、天文学におけるフラーレンの役割に対する現在の関心がより高まったといえる。
2015年7月16日号の Nature ハイライト
地球化学:大陸地殻の形成
植物科学:マメ科植物が窒素固定細菌を識別する仕組み
がん:乳がんでのステロイド受容体のクロストーク
宇宙化学:天の川銀河に発見されたフラーレンC60
ナノスケール材料:量子ドットをつなぐペロブスカイト
発生生物学:ナノチューブで情報交換する幹細胞
神経免疫学:脳のリンパ管系
免疫学:リンパ球形成のスフィンゴ脂質による抑制
システム生物学:調節経路の進化を系レベルで見る
構造生物学:レトロウイルス組み込みの選択性を突き止める