Nature ハイライト
構造生物学:明らかになったフリッパーゼの機構
Nature 524, 7566
反転運動(flipping)と呼ばれる、膜二重層間の脂質の転位は、脂質非対称性の維持に必須で、シグナル伝達や小胞形成などの過程に必要である。大きな極性頭部を含み、膜に埋め込まれた脂質の反転は遅く、エネルギー的に不利である。この過程はフリッパーゼにより触媒されるが、その機構は今のところよく分かっていない。今回著者たちは、Campylobacter jejuniで脂質結合オリゴ糖(LLO)の反転運動を促進する、ABC輸送体PglKの内向きと外向き状態のX線結晶構造を解いた。それらの構造とそれに続く生化学実験より、独特な機構が明らかになった。LLOのポリプレニル尾部は脂質二重層に部分的に埋め込まれたままで、ピロリン酸オリゴ糖頭部がATPの加水分解後、反転して外向きのキャビティに入る。
2015年8月27日号の Nature ハイライト
進化学:真核生物が有する原核生物遺伝子の起源
構造生物学:明らかになったフリッパーゼの機構
プラズマ物理学:航跡場プラズマによって加速される陽電子
フォトニクス:銅によってさらに実用化に近づいた原子レーザー
化学:複数の触媒で炭素–炭素結合を形成する
発生生物学:無脊椎動物に見られる頭部様の前駆構造
神経科学:網膜の運動検出器の解明
発生生物学:Mycによる細胞競合
細胞生物学:タンパク質輸送に関連したミトコンドリア機能障害