Nature ハイライト

細胞生物学:タンパク質輸送に関連したミトコンドリア機能障害

Nature 524, 7566

ミトコンドリアの機能障害と細胞のタンパク質恒常性の破綻は、多くの疾患や加齢に関連して見られる病変の特徴である。ミトコンドリアの損傷はエネルギー枯渇などのさまざまな仕組みを介して細胞死を引き起こすことがある。今回、細胞質ゾルで起こるリボソームからのミトコンドリアタンパク質輸送の効率低下が、このような仕組みの1つであることが、2つの研究によって明らかにされた。X WangとX Chenは、ミトコンドリア損傷によって核にコードされているタンパク質のミトコンドリアへの輸送が遮断されることがあり、それによって、彼らがmPOS(mitochondrial precursor over-accumulation stress;ミトコンドリアタンパク質前駆体過剰蓄積ストレス)と命名した経路が細胞質ゾルで起動され、これが細胞変性を引き起こすことを示した。また、mPOSを阻止して細胞の生存を助ける補償過程となる抗変性ネットワークも見つかった。このネットワークは大部分がタンパク質の代謝回転と折りたたみの調節に関連している。一方、A Chacinskaたちはミトコンドリアへのタンパク質の取り込みに不具合が生じた際の反応を調べる目的で、細胞内の転写産物およびタンパク質の変化の網羅的で詳細な解析を行った。こちらの研究でも、ミトコンドリア生合成の不具合から細胞を保護する複数の経路が見つかり、それらにはタンパク質合成阻害やプロテアソームによるタンパク質除去の亢進が主に関わっていることが分かった。

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