Nature ハイライト
発生生物学:Mycによる細胞競合
Nature 524, 7566
細胞は互いに競合することが知られており、増殖の速い「勝者」細胞は、より増殖の遅い「敗者」細胞を除去できる。この過程は、がん関連タンパク質Mycにより引き起こされることがある。生体内での勝者と敗者の間の相互作用を調べるために、E Morenoたちはショウジョウバエ(Drosophila)の正常組織で、mycによる競合のライブ画像化を行った。彼らは、mycをより強く発現する細胞が、近隣細胞に能動的に混ざり合うことで、競合相手を除去する可能性を増加させることを見いだした。具体的には、勝者–勝者、勝者–敗者、敗者–敗者といった種々の細胞の組み合わせによる接触面の張力の違いから、細胞間のインターカレーションが引き起こされる。分子レベルでは、膜脂質PIP3のレベルの違いによる細胞間結合でのアクチンレベルのばらつきが、張力の違いを生み出す。その結果として、組織の破壊と浸潤が起こる。細胞間インターカレーションは、発生ではよく確立された現象だが、今回の結果は疾患という状況でもこれが起こっている可能性を示唆している。
2015年8月27日号の Nature ハイライト
進化学:真核生物が有する原核生物遺伝子の起源
構造生物学:明らかになったフリッパーゼの機構
プラズマ物理学:航跡場プラズマによって加速される陽電子
フォトニクス:銅によってさらに実用化に近づいた原子レーザー
化学:複数の触媒で炭素–炭素結合を形成する
発生生物学:無脊椎動物に見られる頭部様の前駆構造
神経科学:網膜の運動検出器の解明
発生生物学:Mycによる細胞競合
細胞生物学:タンパク質輸送に関連したミトコンドリア機能障害