Nature ハイライト
微生物学:競争によって多剤耐性菌を打ち負かす
Nature 526, 7575
腸球菌のEnterococcus faecalisは普通に見られる腸内細菌で通常は無害だが、抗生物質耐性を獲得するとさまざまな院内感染の原因となって治療が難しい。N SalzmanたちはE. faecalis感染のマウスモデルを作製し、このモデルを使って、バクテリオシンを発現するプラスミドpPD1を持つ腸球菌は既存の腸球菌群に取って代わること、また他の腸球菌にプラスミドを伝達できるので、それによってバクテリオシンを発現する細菌の腸内での安定性を増強することを明らかにした。しかし、プラスミドを伝達しない腸球菌株を定着させると、他の腸球菌が、抗生物質バンコマイシンに耐性を持つものも含めて、腸から排除された。この結果は、バクテリオシンを産生する細菌が、競合する多剤耐性株を感染患者から排除するための標的治療法として使えることを示唆している。
2015年10月29日号の Nature ハイライト
学習と記憶:記憶検索を標的として制御する
免疫学:ガスダーミンDの自然免疫における役割
宇宙:彗星67Pにある酸素分子
量子物理学:ベル不等式の新しい検証
化学:S-アリール・コンジュゲートの新しい合成法
気候科学:氷床の動きと融解水の関連性
古人類学:中国に初期のホモ・サピエンス
がん:高リスク型の神経芽細胞種におけるTERT変異
がん:組織再生におけるYapの役割
微生物学:競争によって多剤耐性菌を打ち負かす