Nature ハイライト
DNA:DNA損傷部位での正電荷の役割
Nature 527, 7577
DNA損傷は、全てが切断という形で現れるわけではない。例えば、紫外線や薬剤はDNAの塩基を修飾することがあり、こうした修飾による損傷も修復される必要がある。多くの修復酵素は、「フリッピング」により塩基を酵素の活性部位ポケットに入れ、塩基が損傷を受けているかどうかを調べることで損傷を認識している。今回B Eichmannたちは、セレウス菌(Bacillus cereus)のDNAグリコシラーゼAlkDについて、さまざまな修飾を受けた塩基を含むDNAに結合している複数の状態の結晶構造を解明した。意外にも、塩基のフリッピングは損傷の認識にも触媒作用にも関与してないことが分かった。AlkDは、塩基のフリッピングではなく、ホスホデオキシリボース骨格を走査してアルキル化塩基による正電荷の増加を見つけ出し、次にこの正電荷を使ってグリコシド結合の切断を促進する。これらの知見はAlkDが陽イオンを含む損傷に特異的に働く仕組みを説明している。
2015年11月12日号の Nature ハイライト
神経科学:不安と恐怖の調節機構
がん:遠隔転移は酸化ストレスによって減少する
分子生物学:BCL11Aエンハンサーの破壊解析
構造生物学:Na+活性化K+チャネルであるSlo2.2の構造
惑星科学:近傍にある岩石質で地球サイズの惑星GJ 1132b
量子物理学:離れているのにエンタングルした中性原子
量子物理学:反強磁性体の異常性に見られる異常
材料化学:液体なのに多孔性の材料
地球力学:最初の沈み込み帯
経済学:気候温暖化のコスト
DNA:DNA損傷部位での正電荷の役割