Nature ハイライト
構造生物学:レナリドミドはがんタンパク質を分解の標的にする
Nature 532, 7597
サリドマイドの誘導体であるレナリドミドは強力な抗がん剤で、多発性骨髄腫などの血液系腫瘍の治療に広く使われている。レナリドミドは、CRL4CRBN E3ユビキチンリガーゼの構成成分であるCRBNに結合することで作用し、このリガーゼの内在性基質のユビキチン化を阻害するか、もしくはこのリガーゼを新しい基質タンパク質に結合させて、それをタンパク質分解の標的にさせる。今回N Thomäたちが報告している構造データによって、レナリドミドやそれと同類の化合物がCRL4CRBNの基質特異性を変化させる仕組みが明らかになった。CRBNとレナリドミドが共同してがんに関連する基質(ここではキナーゼのCK1α)が結合する界面を形成することが分かった。リンパ球転写因子Ikarosの結合表面も、同じようにして形成されるらしい。小型分子である薬剤がタンパク質同士の結合を促進する仕組みが明らかにされたことは、タンパク質分解に影響を及ぼす、また別の薬剤の開発に役立つかもしれない。
2016年4月7日号の Nature ハイライト
生物地球化学:土壌管理で気候変動を緩和する
神経科学:神経発達障害に見られるPTCHD1欠失
微生物学:ヒト真菌病原体で見つかった毒素
素粒子宇宙物理学:近傍の超新星の同位体記録
気候科学:過去12世紀の水文気候変動
生物地理学:最終氷期極大期以後の島の生物多様性
神経科学:捕食者のにおいに応答する神経回路
幹細胞:半数体のヒト幹細胞
免疫学:Lypd8は上皮から微生物相を隔離する
構造生物学:レナリドミドはがんタンパク質を分解の標的にする