Nature ハイライト
構造生物学:抗うつ剤の構造活性相関
Nature 532, 7599
セロトニンは、中枢神経系の活動を調整するだけでなく、体全体にわたる多数の過程を調節する。今回、ヒトのセロトニン輸送体(SERT)について、最も広く処方されている2種の抗うつ剤と複合体を形成した状態のX線構造が解明された。使われた薬剤は、選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)の(S)-シタロプラムとパロキセチンである。得られた構造から、抗うつ剤は輸送体タンパク質を細胞外に向けて開口したコンホメーションに固定し、セロトニンの結合部位への進入を直接遮断することが分かった。また、これまで知られていなかったアロステリック部位が細胞外部の前庭中に見つかり、この部位へリガンドが結合すると中心部位からのリガンド解離が抑制されることが明らかにされ、SERTの抗うつ剤としての作用機構が確認され、将来の薬剤設計のための道筋が示された。
2016年4月21日号の Nature ハイライト
幹細胞:骨髄血管の専門化
エピジェネティクス:哺乳類ゲノムにおけるN6-アデニンのメチル化
構造生物学:抗うつ剤の構造活性相関
宇宙物理学:孤立銀河に見つかった超大質量ブラックホール
超伝導:クーパー対凝縮体の可視化
考古学:フローレス原人の年代はもっと古かった
神経科学:皮質興奮性ネットワークのコネクトミクス
細胞生物学:マグネシウムイオンを用いる生物時計
幹細胞:加齢に関連した骨髄の変化
微生物学:CRISPR–Cas免疫に見られる多様性