Nature ハイライト
がん免疫学:抗PD-1/PD-L1抗体療法に対する反応性の診断マーカー
Nature 534, 7607
多くのがんにおいて、免疫回避に関わるタンパク質であるPD-1(programmed cell death 1)やPD-L1(PD-1のリガンド)を標的とする抗体を用いた療法が顕著な効果を示しているが、その有効性は全てのがんで一様ではなく、免疫回避の遺伝学的基盤はまだよく分かっていない。小川誠司(京都大学)たちは今回、PD-L1遺伝子の3′領域に生じた構造異常が、PD-L1タンパク質の過剰発現を招き、成人T細胞白血病やびまん性大細胞型B細胞リンパ腫など、多くのヒトがんにおいて免疫回避を促進させていることを示した。また、マウス腫瘍モデルにおいてPD-L1遺伝子の3′非翻訳領域(UTR)をCrispr–Cas9系で欠失させても、免疫回避が起こることが明らかとなり、PD-L1遺伝子の3′-UTRの異常を診断マーカーにして抗PD-1/PD-L1抗体療法の有効な患者を特定できる可能性が示唆された。
2016年6月16日号の Nature ハイライト
幹細胞:タンパク質合成と幹細胞性
がん:p53とc-Myc経路の両方を標的にする
構造生物学:膜タンパク質の構造を脂質ナノディスクを使って保持する
地形学:ばらばらにならない彗星67Pの核
統計物理学:記憶の飛んでいない酔歩者の統計
材料科学:強誘電複合酸化物のモデル化
テクトニクス:南海トラフ地震発生帯
幹細胞:繊維芽細胞からニューロンへの再プログラム化
がん免疫学:抗PD-1/PD-L1抗体療法に対する反応性の診断マーカー
がん:膵臓がん治療の標的となるMusashiタンパク質
構造生物学:アミノ酸/代謝産物排出体の構造