Nature ハイライト
がん:腎臓がんでのHIF-2阻害剤の働き
Nature 539, 7627
転写因子HIF-2は、淡明細胞型腎細胞がんの重要なドライバーで、アンドラッガブル、つまり創薬が困難とされてきた。しかし今週号では2つのグループが、PT2399と命名された新規なHIF-2α阻害剤を開発し、検証した結果を報告している。W Kaelinたちは、原発性および転移性のpVHL欠損淡明細胞型腎細胞がんの前臨床マウスモデルでPT2399が腫瘍退縮を引き起こしたことを明らかにしている。J Brugarolasたちは、ヒト腎細胞がん由来の腫瘍移植片を移植されたマウスでPT2399の効果を調べた。PT2399は18種類の腫瘍細胞株のうちの10種類で腫瘍増殖を遅らせ、また忍容性は良好であることが分かった。さらに、この薬剤に対する感受性のマーカー候補を突き止め、耐性獲得の影響とその機構について、その詳しい性質をin vivoで初めて明らかにしている。2つのグループは共に、一部のpVHL欠損細胞株でPT2399に対する感受性にばらつきがあることを報告しており、この薬剤の臨床での使用には予測バイオマーカーの開発が必要であることがはっきりした。
2016年11月3日号の Nature ハイライト
構造生物学:蚊に効果がある殺幼虫物質BinABの構造
細胞生物学:ClpC–ClpPタンパク質分解複合体の分解シグナル
細胞生物学:がん細胞におけるテロメアの維持
生物工学:REXERを使ったコドンの置換
素粒子物理学:暗黒物質を見通す窓としてアクシオンを評価する
物性物理学:極低温のルビジウム87をかき混ぜるのではなく揺さぶる
地球力学:下部マントル条件でのブリッジマナイトのふるまい
考古学:サルが作った剥片石器
免疫抑制:骨髄前駆細胞の解析
がん:腎臓がんでのHIF-2阻害剤の働き