Nature ハイライト
Cover Story:疾走する進化:タツノオトシゴの迅速に進化するゲノム
Nature 540, 7633
表紙は、インドネシアのスラウェシ島北部のレンベ海峡で撮影されたタツノオトシゴ。タツノオトシゴ類は、進化の豊かさを示す重要な例であり、ウマに似た体型や雄が持つ育児嚢など、いくつかの点で硬骨魚類の中では独自の存在となっている。今回、タツノオトシゴの1種であるタイガーテールシーホース(Hippocampus comes)のゲノム塩基配列が、国際共同研究チームによって報告されている。このゲノムはこれまでに調べられた魚類ゲノムの中で最も速い速度で進化したものであることが分かった。H. comesはタツノオトシゴの中でも最も広く売買されている種の1つで、乾燥品は漢方薬用に、生体は水族館用に取引されており、IUCNレッドリストでは現在「絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)」とされている。ゲノム塩基配列の解析から、その独自の形態への進化についての手掛かりが得られた。注目されるのは、後肢と腹鰭の発生に機能するマスター制御遺伝子tbx4の欠失である。タツノオトシゴ類には腹鰭がなく、ゼブラフィッシュでも、tbx4をノックアウトした変異体は腹鰭を欠くことが今回確かめられた。
2016年12月15日号の Nature ハイライト
構造生物学:タンパク質の動きと生物学的機能を結び付ける
酵素生物学:ニコチンアミド依存性酵素の新たな活性
水文学:地球の地表水の変化を示す地図
神経発生疾患:自閉症トランスクリプトームの大規模解析
幹細胞:Hox遺伝子と筋幹細胞の衰え
がん:急性白血病におけるLSC17スコアの評価
ウイルス学:ジカウイルスはマウスの精巣に損傷を与える
ウイルス学:抗ジカウイルス抗体はウイルス複製を阻害する
免疫学:C型レクチン受容体を介した抗HIV活性
生物エネルギー学:光化学系IIの室温での構造
創薬:ケモカイン受容体の小分子アンタゴニスト