Nature ハイライト

Cover Story:疾走する進化:タツノオトシゴの迅速に進化するゲノム

Nature 540, 7633

タイガーテールシーホース(<i>Hippocampus comes</i>)。
タイガーテールシーホース(Hippocampus comes)。 | 拡大する

Credit: Frank Schneidewind

表紙は、インドネシアのスラウェシ島北部のレンベ海峡で撮影されたタツノオトシゴ。タツノオトシゴ類は、進化の豊かさを示す重要な例であり、ウマに似た体型や雄が持つ育児嚢など、いくつかの点で硬骨魚類の中では独自の存在となっている。今回、タツノオトシゴの1種であるタイガーテールシーホース(Hippocampus comes)のゲノム塩基配列が、国際共同研究チームによって報告されている。このゲノムはこれまでに調べられた魚類ゲノムの中で最も速い速度で進化したものであることが分かった。H. comesはタツノオトシゴの中でも最も広く売買されている種の1つで、乾燥品は漢方薬用に、生体は水族館用に取引されており、IUCNレッドリストでは現在「絶滅危惧II類(絶滅の危険が増大している種)」とされている。ゲノム塩基配列の解析から、その独自の形態への進化についての手掛かりが得られた。注目されるのは、後肢と腹鰭の発生に機能するマスター制御遺伝子tbx4の欠失である。タツノオトシゴ類には腹鰭がなく、ゼブラフィッシュでも、tbx4をノックアウトした変異体は腹鰭を欠くことが今回確かめられた。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度