Nature ハイライト
創薬:ケモカイン受容体の小分子アンタゴニスト
Nature 540, 7633
ケモカイン受容体群はGタンパク質共役受容体のファミリーの1つであり、免疫細胞の移動を調節していて、その機能は広範囲にわたる疾病に関与するとされてきた。今回2つの研究グループが、それぞれ異なるケモカイン受容体について、小分子阻害剤と結合した状態の結晶構造を報告している。T Handelたちは、自己免疫疾患や炎症性疾患、代謝性疾患に加えて、がんでも薬物標的となると期待されているCCR2が、オルソステリックアンタゴニスト(BMS-681)とアロステリックアンタゴニスト(CCR2-RA-[R])と結合した状態の構造を示している。一方、F Marchallたちは、免疫細胞の腸への動員に関わっていて、炎症性大腸炎の薬剤標的として有望視されているCCR9の、CCR9選択的アンタゴニストvercirnonと複合体を形成した構造を報告している。CCR2とCCR9の構造から、受容体の細胞質側表面にある新規なアロステリックポケットが明らかになった。このアロステリックポケットは薬剤開発につながる可能性が非常に高いと思われ、また同様のポケットは他のケモカイン受容体にも存在すると考えられる。
2016年12月15日号の Nature ハイライト
構造生物学:タンパク質の動きと生物学的機能を結び付ける
酵素生物学:ニコチンアミド依存性酵素の新たな活性
水文学:地球の地表水の変化を示す地図
神経発生疾患:自閉症トランスクリプトームの大規模解析
幹細胞:Hox遺伝子と筋幹細胞の衰え
がん:急性白血病におけるLSC17スコアの評価
ウイルス学:ジカウイルスはマウスの精巣に損傷を与える
ウイルス学:抗ジカウイルス抗体はウイルス複製を阻害する
免疫学:C型レクチン受容体を介した抗HIV活性
生物エネルギー学:光化学系IIの室温での構造
創薬:ケモカイン受容体の小分子アンタゴニスト