生理学：脂質による寿命延長

線虫の寿命は、H3K4me3メチルトランスフェラーゼの欠損により延長するが、その仕組みと理由については分かっていない。今回、生殖系列におけるH3K4me3の欠失が、線虫の腸での脂質代謝に影響し、多価不飽和脂肪酸（PUFA）ではなく、一価不飽和脂肪酸（MUFA）の蓄積につながることが明らかになった。この脂質代謝の切り替えは、部分的には、S6Kなどの生殖系列での特異的標的の発現低下や、保存されたデルタ9脂肪酸デサチュラーゼの発現上昇につながる腸での転写ネットワークの活性化を介して起こると考えられる。MUFAの蓄積はH3K4me3メチルトランスフェラーゼ欠損による寿命延長に必要であり、著者たちはPUFAではなく食餌中のMUFAだけで、線虫の寿命を延長させるのに十分であることを見いだした。他の生物種でも、食餌中や内因性のMUFAによって寿命や健康寿命が延び得るかどうかは、今後の研究課題である。

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