Nature ハイライト
遺伝学:ハエの翅の進化を予測する
Nature 548, 7668
遺伝的変異は進化の「機関室」である。遺伝的変異がなければ遺伝子は多様化せず、自然選択は作用する力を持たないだろう。しかし、遺伝的変異が適応の原材料を提供するとした場合に、そうした変異がさらにどの程度、地質年代スケールで進化を制約するのかは議論の的となっている。変異速度は概して非常に低く、進化の時間スケールで見られる多くの遺伝的分岐に圧倒されると考えられている。D Houleたちは今回、「香油の中の1匹のハエ」になり得る結果を示している。とはいえ、実際の研究は数千匹ものハエを対象に行われた。ショウジョウバエ科(Drosophilidae)のハエの翅5万枚以上を調べたところ、変異、遺伝的多様性、および過去4000万年間の進化速度の間に、予想外で強い正の相関があることが明らかになった。今回の結果は、進化における変異の役割に関する複数のモデルに疑問を投げ掛けるものだ。
2017年8月24日号の Nature ハイライト
微生物学:新生児の敗血症を減らす
発生学:CRISPRにより修正された変異
天文学:重力波を使ってブラックホールのスピンの向きを見分ける
化学:分子メモリーが動作する温度の上昇に高まる期待
大気科学:過去のメタン放出量を再評価する
遺伝学:ハエの翅の進化を予測する
幹細胞:胃組織の維持
幹細胞:血液幹細胞のバーコードによる追跡
細胞生物学:放射線と遺伝毒性物質によるがん複合治療における細胞周期の影響
がん:CDK4/6阻害剤の抗腫瘍効果