Nature ハイライト
Cover Story:腸の再生:局所的な幹細胞の制御によってショウジョウバエの腸のサイズが一定に保たれる
Nature 548, 7669
成体の器官の大半は絶えず再生しており、古い細胞が幹細胞の子孫細胞に常に置き換えられている。臓器が同じサイズを維持するには、細胞産生と細胞消失が厳密に釣り合っていなければならないが、そうした制御の仕組みはよく分かっていない。今回L O'Brienたちは、組織レベルの平衡、ひいては一定の臓器サイズが、再生時の細部間の局所的なコミュニケーションに起因することを明らかにしている。著者たちは、ショウジョウバエ(Drosophila)の腸(表紙の写真)を調べ、古い腸細胞の死によって幹細胞分裂の阻害が解除されるというフィードバック機構を見いだした。健康な腸細胞では、上皮増殖因子(EGF)活性化プロテアーゼrhomboidが抑制されることで、Eカドヘリンタンパク質によりEGFの分泌が妨げられる。腸細胞が自然に死ぬと、Eカドヘリンの喪失によってrhomboidが誘導され、次に近くの幹細胞のEGF受容体が活性化されて、死んだ細胞の置換が生じる。組織が必要とする時と場所に細胞置換を限定することによって、この機構は組織レベルの平衡を確保している。
2017年8月31日号の Nature ハイライト
免疫療法:CRISPRスクリーニングによって、がん免疫療法抵抗性を誘導する遺伝子群が明らかに
微生物学:CRISPR干渉におけるセカンドメッセンジャー
生化学:ホルムアルデヒドの解毒が一炭素代謝を促進する
天文学:強い重力レンズの解析を加速させる機械学習
天文学:さそり座の新星は矮新星になっている
ナノ科学:細胞膜に「穴を開ける」分子機械
古気候学:火山由来の炭素が太古の気候を温暖化した
生物地球化学:藻類が大発生したとき
神経科学:睡眠誘発ニューロン
幹細胞:非ヒト霊長類でのパーキンソン病の緩和