Nature ハイライト
分子進化学:選ばれなかった無数の道
Nature 549, 7672
歴史に別の展開があり得たのかどうかは、無数の「たられば」論の核心的問題であるが、実験で取り扱うことができないため、ほとんど推測することしかできていない。J Thorntonたちは今回、特性が十分に明らかにされている祖先的ホルモン受容体のDNA結合特異性に着目し、このタンパク質がとり得た可能性のある膨大な数の進化的道筋をマッピングした。再構成した50万のバリアントについてdeep mutational scanning法を適用することにより、極めて多様な生物物理学的解決法に依存して派生機能を歴史的進化の帰結と同等またはそれ以上の能力で果たすことのできる別のタンパク質配列が数百通り発見された。今回の結果は、我々が生きている生物学的な現実世界は進化のサイコロが何度も振られた中で出た1つの帰結にすぎないこと、そして、今この現在があることにはおそらく特段の理由がないことを物語っている。
2017年9月21日号の Nature ハイライト
神経科学:一連の予想外な神経事象を追跡する
免疫学:ニューロンによる免疫細胞の調節
物性物理学:挟まれたグラフェンが量子相のギャップを埋める
冶金学:工業合金の3D印刷
化学:人工的ジアステレオ異性体
ゲノミクス:ランの起源
神経科学:BRAF変異が脳疾患の原因となる
がん:色素沈着を誘導して皮膚がんを防ぐ
分子進化学:選ばれなかった無数の道
構造生物学:基本転写因子の構造