Nature ハイライト
免疫学:腸内の病原性片利共生生物に対して寛容が生じる機構
Nature 554, 7692
よく見られる腸内片利共生細菌に対して、感受性でない宿主の場合には寛容がうまく成立するのだが、感受性の宿主では細菌の一部が大腸の慢性炎症、つまり大腸炎を自然発症させることがある。だが、こうした違いが生じる理由は分かっていなかった。今回、マウスではヘリコバクター属(Helicobacter)特異的な炎症性17型ヘルパーT(TH17)細胞を選択的に「再教育」して炎症を防ぐのは、ヘリコバクター属特異的な制御性T(Treg)細胞であり、このT細胞の生成には転写因子c-MAFが必要であることが示された。c-MAF、もしくはc-MAF誘導性サイトカインのIL-10が存在しないと、細菌特異的なTreg細胞とTH17細胞の間のバランスが崩れ、マウスは病原性共生生物依存性の炎症性腸疾患を発症する。著者たちは、病原性共生生物の抗原を発現して非病原性のTreg細胞を誘導するようにした微生物を遺伝子操作によって作り出せば、炎症性腸疾患の患者で恒常状態を再確立するための治療手段となり、疾患を軽減できるのではないかと考えている。
2018年2月15日号の Nature ハイライト
植物科学:ミカン類の広がり
神経科学:バースト活動と抗うつ薬の関係
宇宙物理学:脈動するオーロラ
物性物理学:量子スピン液体を実現するハニカム格子
材料科学:欠陥が結晶を癒す
生態学:魚類の相互作用と生態系の安定性
動物行動:社会脳
神経科学:感覚履歴はどのように行動に影響するか
免疫学:腸内の病原性片利共生生物に対して寛容が生じる機構
細胞生物学:「塀の中」での情報伝達