Nature ハイライト
超分子化学:柔軟な自己修復結晶
Nature 557, 7703
結晶材料を柔軟にするには、原子成分や分子成分の相互作用の程度についてトレードオフが求められる。つまり、一般的に相互作用を増やすと結晶性が維持されるが、相互作用を減らすと柔軟になる。そのため、結晶の柔軟性(すなわち結晶格子の膨張性)の程度が制限されることになる。今回A Tezcanたちは、フェリチンタンパク質結晶の多孔性を利用して、フェリチン結晶内にポリマーネットワークを注入した。このタンパク質とポリマーの複合材料は、水を加えると、周期性を維持しつつ等方的に膨張してサイズが約2倍になる。この膨張は可逆的であり、塩を加えると収縮する。この複合材料は、フェリチン格子とポリマーネットワークの間の非共有結合性相互作用によって、それぞれの単独成分よりも丈夫になるとともに、傷つけると自己修復挙動を示す。この新たなクラスの複合材料は、フェリチン結晶の構造秩序とポリマーヒドロゲルの化学的な調整能を併せ持っている。
2018年5月3日号の Nature ハイライト
分子生物学:SAMHD1が炎症から細胞を守る仕組み
構造生物学:ガスダーミンが膜に形成する小孔の構造
天文学:親星の風に吹き飛ばされる大気
素粒子物理学:本格化する反物質の分光測定
超分子化学:柔軟な自己修復結晶
有機金属化学:アニオン性アルミニウムを作る
古生物学:祖先的鳥類の頭蓋が明らかに
微生物学:ミトコンドリアの祖先を再検討する
細胞生物学:胚発生過程でのHOIL-1の役割
構造生物学:HIV-1逆転写酵素の結合機構