Nature ハイライト
Cover Story:反撃の時:多剤耐性グラム陰性細菌に有効な新たなクラスの抗生物質
Nature 561, 7722
多剤耐性菌の増加は大きな懸念を生んでおり、中でも「ESKAPE」病原体と呼ばれる種類の耐性菌は、治療不可能な感染という最も深刻なリスクをもたらす。このうちグラム陰性細菌である大腸菌(Escherichia coli)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、アシネトバクター属菌のAcinetobacter baumanniiは、細胞壁の外側にもう1つの膜構造である外膜を持ち、これによって多くの薬剤の標的への到達が妨げられていることから、特に懸念されている。多大な努力にもかかわらず、グラム陰性細菌に有効な新しい抗生物質は過去50年間で1つも承認されていない。今回C HeiseとP Smithたちは、アリロマイシン類の天然物を化学的に最適化することで強力な広域抗生物質が得られ、この薬剤がin vitroおよび複数のin vivo感染モデルでグラム陰性細菌の臨床分離株に対して活性を示すことを報告している。著者たちは、今回の結果によって、最適化されたアリロマイシン類似化合物が、切望されている多剤耐性グラム陰性細菌感染の新規治療薬になる道が開かれるはずだと考えている。
2018年9月13日号の Nature ハイライト
生理学:RANKLで作ったり壊したり
がん:ヒト膵臓がんの進化の流れ
素粒子物理学:進歩する反物質研究
物性物理学:スピンの長距離輸送にスピンホール効果が役立つ
材料科学:三次元印刷による階層的構造体の形成
環境科学:海水準上昇が沿岸湿地に及ぼす影響
幹細胞:皮膚再生のための再プログラム化
植物科学:わずかな違いがシグナル伝達の大きな違いにつながる
免疫学:STINGとPINK1は協働して体温を上昇させる
分子生物学:翻訳と同時に起こる複合体組み立て