Nature ハイライト
素粒子物理学:進歩する反物質研究
Nature 561, 7722
反物質を操作し特性評価する能力は、電荷–パリティ対称性や電荷–パリティ–時間対称性などの基本的な対称性の検証に極めて重要である。現在、反原子を生成し貯蔵する方法を改善する取り組みには、重要な技術的進歩が同時に必要であり、その1つの例が反物質を冷却する技術の開発である。今回、CERNのALPHAコラボレーションが、水素の反物質である反水素のライマンα 1S–2P遷移の観測を報告している。磁気的に捕捉した反水素の1S–2P遷移を励起するには、121.6 nmの狭線幅のナノ秒パルス光を放出する固体系レーザー源の設計が必要だった。新たに取り組んだライマンα遷移は、反水素を2.4 mKのドップラー限界まで冷却するのに利用できる可能性がある。従って、今回の研究は、反物質のレーザー冷却に向けた重要な技術的前進であるとともに、反物質分光法の、軌道角運動量を持つ量子状態への拡張を示している。
2018年9月13日号の Nature ハイライト
生理学:RANKLで作ったり壊したり
がん:ヒト膵臓がんの進化の流れ
素粒子物理学:進歩する反物質研究
物性物理学:スピンの長距離輸送にスピンホール効果が役立つ
材料科学:三次元印刷による階層的構造体の形成
環境科学:海水準上昇が沿岸湿地に及ぼす影響
幹細胞:皮膚再生のための再プログラム化
植物科学:わずかな違いがシグナル伝達の大きな違いにつながる
免疫学:STINGとPINK1は協働して体温を上昇させる
分子生物学:翻訳と同時に起こる複合体組み立て