Nature ハイライト
代謝:GDF15はメトホルミンの作用を仲介する
Nature 578, 7795
メトホルミンは、2型糖尿病、がん、心血管疾患、老化の治療に使われる薬である。メトホルミン作用の二次的なメディエーターと考えられている因子は数多くあるが、メトホルミン作用の分子機構はまだ解明されていない。A CollとM Chenたちは今回、メトホルミンの一部の作用(体重減少や摂食量の減少、グルコース代謝への二次的な作用など)が、サイトカインGDF15の活性に直接依存していることを明らかにしている。マウスとヒトにおいて、メトホルミンは血中GDF15の上昇を引き起こし、また、マウスでGDF15を薬理学的あるいは遺伝的に阻害したり、GDF15の受容体であるGFRAL(GDNF family receptor α-like)を遺伝的に除去したりすると、体重減少、肝臓脂肪の減少、インスリン感受性の改善といったメトホルミンの作用が全て完全に阻害された。メトホルミンとGDF15との分子的なつながりに関する詳細は解明されていないが、メトホルミンは統合的ストレス応答(ISR)に関係するミトコンドリア毒性を持つことが知られていて、著者たちは、GDF15の増加がISRの腸と腎臓上皮での誘導により引き起こされると考えている。
2020年2月20日号の Nature ハイライト
原子物理学:反水素の量子電磁力学
光物理学:自由電子レーザーにおけるアト秒パルス
材料化学:したたり落ちる液滴で発電
化学:光を用いた希少糖の合成
気候科学:大気中のメタンに残されたヒトの痕跡
進化学:前障の睡眠への関与
微生物学:全球に分布する巨大ファージ
微生物学:巨大ウイルスの全球的多様性
がん:AQP5は胃幹細胞に豊富に存在する
代謝:GDF15はメトホルミンの作用を仲介する
エピジェネティクス:X染色体不活性化を分子的に統合する因子
細胞生物学:活動中のキュリン–RING型E3リガーゼ