Nature ハイライト
物性物理学:電流を曲げると現れる熱電効果
Nature 558, 7708
ペルチェ効果は、工学的用途において、電流を用いて加熱や冷却を行える一般的な手段である。通常この効果を利用するには、ペルチェ係数(電流によってどの程度の熱が運ばれるかを示す尺度)が異なる2種類の伝導性物質を接合する必要がある。今回、内田健一(物質・材料研究機構ほか)たちは、接合のない単一物質(ニッケル)において従来のペルチェ効果に似た効果を観測したことを報告している。この成果のカギは、一部の磁性物質ではペルチェ係数が磁化方向に対する電流の相対的な方向に依存することに気付いたことである。角を曲がるように電流を流すといった単純な方法で物質中の電流の方向を変えることができれば、ペルチェ係数も変化し、正味の効果が従来の接合型ペルチェヒートポンプの効果と同等になる。この手法は単純な物質を使うため、チップスケールの熱管理システムの開発に役立つ可能性がある。
2018年6月7日号の Nature ハイライト
工学:アナログメモリーを用いたニューラルネットワーク訓練の高速化
古生態学:塩水を好んでいた初期の四肢類
神経科学:視覚野の運動方向選択性
核物理学:大きな課題を1つ乗り越えた量子色力学
物性物理学:電流を曲げると現れる熱電効果
気候変動:進路の途中で停滞する熱帯低気圧
哺乳類進化学:最初期の哺乳類の系統発生を明らかにする
群集生態学:都市化が体サイズに及ぼす影響
発生生物学:ヒトの胚性幹細胞から形成体を誘導
免疫学:Hippoは代謝と免疫機能を連動させる