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地震学、再建への道 - 警報システムのさらなる改良

原文:Nature 473, 146–148 (号)|doi:10.1038/473146a|Rebuilding seismology: Warnings work, but must be better

山田真澄(やまだ ますみ)
京都大学防災研究所

東日本大震災から約3か月半。5人の日本人地震学者が、今回の地震と津波から得た教訓について考察する。

気象庁は、リアルタイムで地震と津波の警報を出すための、世界でも最先端のシステムを持っている。2007年に導入された緊急地震速報は、地震発生後、数秒以内に強い揺れを警告するシステムで、携帯電話、テレビ、ラジオ、市町村の防災無線を通じて、これまでに10回以上、強い地震の警報を出してきた。しかし、このシステムにはまだ改良の余地があり、今回の地震でその問題点が明らかになった。

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2011年3月11日、警報システムは東北地方の太平洋沖で地震を検知し、震源に最も近い観測点に最初のP波が到達した8秒後に、震央に近い地域の住民に警報を発した。警報を受けて、当時、この地域を走っていた27本の新幹線は緊急停止し、脱線せずにすんだ。3分後には、岩手県、宮城県、福島県に大津波警報が発せられ、15~20分後には、最も近い沿岸部に津波が到達した。

だが、警報システムは全体として十分に機能したとは言えない。今回の地震では、システムは地面の揺れと津波の高さを過小評価し(編集部註:当初、マグニチュードは7.9、津波の高さは岩手県と福島県で3m、宮城県で6mと予想)、関東地方には警報を出さなかった。ところが、関東でも強い揺れに見舞われ、大きな被害を受けた(図「予測震度と実測震度の食い違い」参照)。なぜ、予想できなかったのか? 原因は主に、岩盤の破壊プロセスが複雑で、最初の振幅が比較的小さかったことによる。ただし、震災後、より多くの情報が利用可能になるにつれ、システムは改良されつつある。

図1
図1:予測震度と実測震度の食い違い
気象庁の緊急地震速報は、最初に到達した地震波のデータにもとづいて、狭い地域に強い揺れがくるという予測を出した。けれども実際の揺れは非常に強く、広い範囲にわたっていた。 | 拡大する

Source: M. YAMADA & JAPAN MET. AGENCY

余震に関しては、強い揺れに対する緊急地震速報が70回以上発表されている。警報システムは、こうした小規模な地震についてはよく機能しているが、同時に発生した地震によって混乱し、揺れを感じる地点の特定において何度かエラーを起こした。

今回は、地震発生時の地震データに予想外の特性があり、緊急地震速報システムのアルゴリズムが欺かれてしまった。しかし、技術の改良により大きな地震を速やかに認識できるようになれば、次に大地震が起こったときには(例えば、西日本の広い範囲で被害が予想されている南海地震の際には)、システムは適切に機能できるかもしれない。日本の緊急地震速報システムは、こうした情報を受け止め、正しく解釈できる社会においては、被害を軽減する真に効果的な手段になるはずだ。

(翻訳:三枝小夜子)

本記事は、Nature ダイジェスト 2011年7月号に掲載されています。

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