Nature ハイライト
核物理学:地下深くから宇宙を探る
Nature 587, 7833
宇宙における通常の物質のほとんど全ては、バリオンでできており、バリオン物質と呼ばれている。知ってのとおり、宇宙には目に見えるものよりも多くの物質が存在するようなので、ビッグバン後の宇宙の最初の数分間でバリオン物質がどれだけ生成されたかを見積もることは重要である。この見積もりの物理学的手法には2つある。1つは宇宙マイクロ波背景放射の直接的な天文学的計測によるもので、もう1つはビッグバン元素合成の理論モデルによるものである。後者の方法はこれまで、いくつかの重要な核反応の断面積が十分正確に分かっていないため、精度の点で前者に後れを取ってきた。今回、イタリア国立核物理学研究所グランサッソ研究所のLUNAコラボレーションは、重水素ガスに陽子を衝突させた結果の高精度測定を行うことで、重水素が燃焼してヘリウム3を生じる核反応の最も正確な断面積を報告している。著者たちが示しているように、この精度のレベルは宇宙初期のバリオン密度を理論的に見積もるには十分であり、そうした見積もりで得られた値は天文学的な観測結果と同様の精度であるとともに、それらとよく一致していた。
2020年11月12日号の Nature ハイライト
核物理学:地下深くから宇宙を探る
物性物理学:モアレ超格子における豊富な相関状態
大気科学:温暖化する気候によって遅くなる上陸後のハリケーンの衰弱
ゲノミクス:数百例のゲノムを並べる多重アラインメントツール
ゲノミクス:鳥類363種の全ゲノムアラインメント
神経科学:マウスの脊髄で情動的接触と痛みを伝える経路
コロナウイルス:ヒトでのSARS-CoV-2に対するCD4+ T細胞応答
免疫学:N4BP1はTRIFと共役するTLR3やTLR4、およびTNFの下流で機能するサイトカイン産生の負の調節因子である
分子生物学:DNAの働きは塩基配列だけにあらず
免疫学:マラリア原虫のRIFINはMHCクラスI分子を模倣する