Nature ハイライト
Cover Story:心臓の問題:被嚢類の進化に光を当てる心臓発生モジュールの解体
Nature 599, 7885
ホヤなどの被嚢類(尾索動物)は、脊椎動物に最も近縁な動物群である。被嚢類の大半は、幼生時は自由遊泳性だが成体になると固着性に(自力で動けなく)なる。しかし、オタマボヤ類はこの変態をせず、一生を通して自由に遊泳する。被嚢類の固着性の起源や、これがオタマボヤ類とどのように関連しているかは、多くの議論を呼んでいる。今回C Cañestroたちは、被嚢類の進化に関する新たな見方を提案している。彼らはオタマボヤ類の心臓の発生に着目し、この動物の心臓咽頭遺伝子調節ネットワークが大規模な遺伝子の喪失によって「解体」されていることを見いだした。著者たちはこの解体が、祖先的な被嚢類に存在した固着性の生活様式を特徴付ける特性の喪失に寄与していたと示唆している。この解体はまた、表紙に示すような、オタマボヤ類を特徴付けるゼリー状の濾過装置「ハウス(包巣)」など、この生物群の固着性の生活様式からの移行を助けた進化的適応とも関連付けられた。
2021年11月18日号の Nature ハイライト
物性物理学:2つの物質の界面のフォノンの測定
航空宇宙工学:ヨウ素を推進剤にしたエンジン
無機化学:カリホルニウムの化学
気候科学:地表面温度パターンの持続性を変えると予測される気候変動
生理学:メラノコルチン3受容体が栄養の充足を思春期のタイミングと結び付ける
神経科学:宝の地図は眼窩前頭皮質にあり
微生物学:細菌相、胆汁酸、長寿
免疫学:重症疾患に対する有効性を高めたFc最適化抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体
細胞生物学:プロテアソームの核への道のり
分子生物学:RNAを介するトランスポゾン挿入機構
構造生物学:未変性のグリシン受容体はどんな格好なのか