Nature ハイライト
中枢神経系疾患:外傷性脳損傷でのシス型リン酸化タウによるタウオパチー
Nature 523, 7561
外傷性脳損傷(TBI)は接触型スポーツの選手や軍人に多く見られ、その諸症状は急性神経機能障害に関連している。また、TBIはアルツハイマー病の主要なリスク因子の1つでもある。脳内のリン酸化タウタンパク質(P-tau)の蓄積を主病変とするタウオパチーは、慢性外傷性脳症やアルツハイマー病に関連する神経変性の明確な特徴であるが、TBI後の早期段階には観察されていない。今回、K Luたちは、シス型リン酸化タウ(cis P-tau)によって引き起こされるタウオパチーが、TBIの患者やマウスモデルの脳損傷の早期ドライバーであり、トランス型リン酸化タウにはその働きがないことを示した。TBIマウスにシス型リン酸化タウに対する抗体を投与すると、シス型リン酸化タウの早期産生が阻止され、その後のタウオパチーの進展や拡散が防止されることから、この種の抗体の開発が進めば脳損傷後のTBIの治療につながるかもしれない。
2015年7月23日号の Nature ハイライト
計算論的神経科学:嗅内皮質のスピード細胞
構造生物学:ABC輸送体の1つの構造
中枢神経系疾患:外傷性脳損傷でのシス型リン酸化タウによるタウオパチー
太陽物理学:コロナジェット形成の再検討
DNAナノテクノロジー:グラフ理論が切り開くナノスケールの3Dプリンティングへの道
有機化学:キラルアミン合成が容易に
集団遺伝学:ケネウィックマンとは何者か
集団遺伝学:両親の血縁度は子の身長と知性に関連する
遺伝学:変異率変動を解析
植物科学:時間を記録する免疫系
寄生虫学:薬剤スクリーニング用の改変型Cryptosporidium