Nature ハイライト
分類学:珍渦虫類の謎を解く
Nature 530, 7588
珍渦虫類は深海に生息する平たい蠕虫だが、集中型の神経系も、体腔や肛門、生殖器官も持っておらず、このことが珍渦虫類の分類上の位置や進化史の解明を難しくしている。体の構造は単純だが、珍渦虫類には、ヒトを含む動物群である新口動物の一員であるように見える特徴もある。もし珍渦虫類が新口動物だとすれば、その構造の単純さは、珍渦虫類でのみボディープランが大幅に単純化されたか、もしくは、多様な新口動物群がそれぞれ独立に新口動物の多くの重要な特徴を獲得したことを意味する。今週号には、珍渦虫類の異なる側面に取り組んだ2つの研究が報告されており、それらの成果は総合すると、この研究領域を一歩前進させるものである。珍渦虫類はすでに大西洋で2種見つかっているが、G Rouseたちは今回、東部太平洋で深海性の新種を4種発見したことを報告している。系統ゲノミクス解析から、これらの新種は旧口動物の系統基部か、あるいはごく初期の左右相称動物として位置付けられた。これは、その単純な形態からの予想と同じような結果であり、構造の大幅な単純化を想定する必要はなくなる。またA Hejnolたちは、珍渦虫類および無腸類蠕虫の計11例のトランスクリプトームを用いた強固な系統発生解析を行い、大筋でRouseたちと同様の結論に達している。
2016年2月4日号の Nature ハイライト
構造生物学:α-シヌクレインにとっての普通は無秩序状態
ウイルス学:薬物療法の間のHIV-1の存続
がんゲノミクス:髄芽腫のエピゲノミクス
光物理学:束縛電子のサブフェムト秒制御
電気化学:光電気化学的水分解の効率向上に向けて
固体地球科学:ローソン石が不安定断層すべりのきっかけとなるか?
分類学:珍渦虫類の謎を解く
神経科学:神経発達障害のモデル
複雑ネットワーク:老化の秘密は時間の尺度にあり
ウイルス学:アデノ随伴ウイルス感染に欠かせない受容体