Nature ハイライト
無機化学:鉄触媒を用いた水の酸化
Nature 530, 7591
水の酸化は、植物の光合成経路における最初のタンパク質複合体である光化学系II中の酸素発生錯体によって効率よく触媒される。しかし、太陽光や電気によって合成化学的燃料を生産する場合、水の酸化段階が大きな障害となり続けており、水の酸化触媒の設計に努力が注がれるようになった。今回、岡村将也(分子科学研究所ほか)たちは、鉄原子を5つ持つ錯体が、効率と安定性に優れた水の酸化触媒となることを示している。この触媒の設計には、電荷蓄積と電子移動を可能にする電子柔軟性の存在と、分子内O–O形成を可能にする隣接活性部位の存在という2つの重要な特徴がある。鉄は地殻中に最も多く存在する遷移金属であり、安価で入手しやすいので、鉄を使用することが重要である。この戦略をさらに発展させて適用することで、実用的で効率の良い水の酸化触媒が得られる可能性がある。
2016年2月25日号の Nature ハイライト
進化遺伝学:現生人類とネアンデルタール人の間の初期の遺伝子交換
免疫学:T細胞を動員して自己免疫を軽減する
エピジェネティクス:RNAのm1A修飾
エピジェネティクス:MLL酵素群の活性化機構
宇宙論:位置が特定された高速電波バースト
無機化学:鉄触媒を用いた水の酸化
生物地球科学:長期にわたる海洋の炭素シンク
社会進化:罰を与えることは信頼性の印となる
古生物学:ヒト族の歯のサイズの進化
がんの代謝:アミノ酸除去でがんと闘う