Nature ハイライト
社会進化:罰を与えることは信頼性の印となる
Nature 530, 7591
人間の社会は、社会規範を侵害した個人が罰を与えられることがあるという点で独特であるように思われる。罰する者が侵害者によって害を被っているわけではなく、また罰を与えることにコストが掛かるとしても、である。このような行動が進化した理由を説明するのは、これまで難しかった。今回、「第三者による罰」が正直であることを示す信頼のシグナルになり得ることを示すモデルが報告された。不正を働く者を罰するコストを負担する人は、その集団で信頼に値すると見なされ、また、より信頼されるような行動をとる。ただし落とし穴がある。より有益なシグナル機構が導入されると、このシグナルは弱くなるのである。すなわち、罰を与える可能性のある人が、コストの掛かる援助を行う機会を得たときには、罰を与えることは少なくなり、罰するという行為は弱い信頼性のシグナルと見なされるようになる。いずれにしても、罰のコストは、信頼できそうに見えるという長期にわたる評判による利益によって埋め合わせられるのかもしれない。
2016年2月25日号の Nature ハイライト
進化遺伝学:現生人類とネアンデルタール人の間の初期の遺伝子交換
免疫学:T細胞を動員して自己免疫を軽減する
エピジェネティクス:RNAのm1A修飾
エピジェネティクス:MLL酵素群の活性化機構
宇宙論:位置が特定された高速電波バースト
無機化学:鉄触媒を用いた水の酸化
生物地球科学:長期にわたる海洋の炭素シンク
社会進化:罰を与えることは信頼性の印となる
古生物学:ヒト族の歯のサイズの進化
がんの代謝:アミノ酸除去でがんと闘う