Nature ハイライト
微生物学:腸内微生物の間に見られる協力関係
Nature 533, 7602
微生物群集は、基本的には協力的なネットワークを形成している。S Rakoff-Nahoumたちは今回、腸内微生物相の中で生じる協力的行動の仕組みについて、in vitro実験とマウスモデルを組み合わせて使って研究を行い、細菌の一種のBacteroides ovatusが酵素系を使って食物多糖類イヌリンの細胞外消化を行うことを見いだした。これはコストの掛かる反応過程だが、Bacteroides vulgatusなどの他の種にとっては食糧源が供給されることで利益となる。B. vulgatusの方はおそらく、阻害物質の解毒や、量が非常に少ない因子や増殖促進因子を分泌することなどによって、B. ovatusにお返しをしていると考えられる。これは複雑な微生物群集内で自然に進化した協力の希少な例であり、生態系を安定化させるのに重要な役割を担っていそうだ。
2016年5月12日号の Nature ハイライト
気候科学:モンスーン変動の起源
ゲノム進化:サケ科ゲノムの進化を探る手掛かり
神経科学:性特異的に再結合する神経ネットワーク
量子物理学:フェムト秒光パルスを使った準粒子衝突型加速器
有機化学:活性化されていないC–H結合の官能基化
大気科学:始生代の上層大気
生物地理学:新世界ザルの初期の移動
神経科学:四肢麻痺における筋応答の部分的回復
人体発生学:ヒト初期胚モデル
微生物学:腸内微生物の間に見られる協力関係
構造生物学:アデノシンA2A受容体の活性化