Nature ハイライト
宇宙物理学:初期銀河の暗黒物質はそれほど多くなかった
Nature 543, 7645
冷たい暗黒物質に基づく宇宙論では、銀河のバリオン成分(星やガス)は、バリオンでない非相対論的な暗黒物質と混在していて、この暗黒物質が銀河やハローの総質量の大部分を占めていると考えられている。近傍宇宙では、暗黒物質が星形成銀河の円盤外側のバリオン領域の大部分を占めるため、円盤内部の目に見える物質の回転速度が円盤半径方向に一定になっているか増加しており、これが、暗黒物質モデルの本質的な特徴となっている。R Genzelたちは今回、大質量で高赤方偏移を示す6つの星形成銀河の円盤外側が示す回転曲線について報告し、半径が増加するにつれて回転速度が減少していることを見いだしている。この理由について彼らは、(1)こうした高赤方偏移銀河ではバリオンが圧倒的に多く、暗黒物質の果たす役割は近傍宇宙より小さい、(2)円盤に観測された半径方向の圧力勾配によって、回転速度が半径の増加とともに遅くなる、という2つの要因が組み合わさっていると提案している。これらの要因の影響はいずれも、赤方偏移とともに大きくなっているように思われる。
2017年3月16日号の Nature ハイライト
がん:子宮頸がんのゲノム・分子基盤
生理学:骨による食欲調節
神経生理学:軟骨魚類の電場感知
宇宙物理学:初期銀河の暗黒物質はそれほど多くなかった
応用物理学:チップ検査を3Dで
大気化学:バイオ燃料飛行の環境影響
幹細胞:代謝と腸の再生
がん:乳がん治療に抗腫瘍マクロファージを使う
細胞生物学:ストレスを受けたタンパク質はミトコンドリアに取り込まれる
分子生物学:秩序立った構造を持たないタンパク質スイッチが低酸素応答を停止させる