Nature ハイライト
量子物理学:フォトニックシミュレーションによる分子ダイナミクス研究
Nature 557, 7707
量子シミュレーターは、物理学、材料科学、化学における複雑な問題を調べる強力な手段になる見込みがある。今回A Laingたちは、集積フォトニクスが、分子の量子ダイナミクスのシミュレーションに役立つプラットフォームをもたらすことを示している。著者たちは、6つの振動自由度を持つ数種の4原子分子の量子力学的時間発展のシミュレーションを検討し、調和近似において振動モード間のエネルギー移動などの過程や熱緩和を調べている。また、液体水における非調和効果も調べ、アンモニアの特定の解離経路を増強する量子状態を特定するよう設計されたフィードバック制御アルゴリズムを試験している。これらの問題は、いずれも現在の古典的コンピューターにとって難題ではないが、得られた知見から、この分野における量子技術の可能性が再確認された。今回の方法をより複雑なハミルトニアン(非調和性の高い原子ポテンシャルなど)やより大きい電子自由度数に拡張することが、今後の研究方向として重要である。
2018年5月31日号の Nature ハイライト
気候変動:陸域の貯水量の定量化
量子物理学:フォトニックシミュレーションによる分子ダイナミクス研究
神経科学:ニューロンのバランスを取る
構造生物学:原核生物が隠し持つユビキチン化の仕組み
核物理学:大質量星内で促進される炭素燃焼
量子材料:グラフェンナノリボンの磁性
表面化学:界面におけるイオン輸送
幹細胞:Notch–コラーゲンV–カルシトニン受容体シグナル伝達が幹細胞の静止状態を維持する
免疫学:ミクログリアによるアストロサイト機能の制御機構
分子生物学:ADNPは調節複合体を形成して遺伝子発現を抑制する