Nature ハイライト
構造生物学:原核生物が隠し持つユビキチン化の仕組み
Nature 557, 7707
ユビキチンは、E1、E2およびE3という酵素が触媒する一連の反応を経て細胞内の他のタンパク質に結合し、その安定性や活性を変化させる。原核生物はユビキチンを持たないが、病原菌にはタンパク質のユビキチン化に影響を及ぼすことができる酵素が複数存在する。例えばレジオネラ菌は、感染の際にSdeAというエフェクターを産生し、これが単独で、宿主のユビキチン化装置とは無関係に基質タンパク質をユビキチン化する。その代わり、このエフェクターには触媒プラットフォームが2つ、すなわち、ユビキチンのADPリボシル化を触媒するモノADPリボシルトランスフェラーゼ(mART)ドメインとホスホリボシル化されたユビキチンの基質タンパク質への連結を触媒するホスホジエステラーゼ(PDE)ドメインがあると考えられている。今回、3つの研究チームがそれぞれ別個に、SdeAが実行するユビキチン化の分子機構に関する手掛かりを明らかにしている。これらの知見によって、この珍しい様式のユビキチン化の細菌感染での役割や、原核生物以外でおそらく果たしている役割について、今後の研究の道が開けるだろう。
2018年5月31日号の Nature ハイライト
気候変動:陸域の貯水量の定量化
量子物理学:フォトニックシミュレーションによる分子ダイナミクス研究
神経科学:ニューロンのバランスを取る
構造生物学:原核生物が隠し持つユビキチン化の仕組み
核物理学:大質量星内で促進される炭素燃焼
量子材料:グラフェンナノリボンの磁性
表面化学:界面におけるイオン輸送
幹細胞:Notch–コラーゲンV–カルシトニン受容体シグナル伝達が幹細胞の静止状態を維持する
免疫学:ミクログリアによるアストロサイト機能の制御機構
分子生物学:ADNPは調節複合体を形成して遺伝子発現を抑制する