Nature ハイライト
細胞生物学:溶解酵素のDYRK3は液相分離を解消させる
Nature 559, 7713
膜のない細胞小器官は、液–液相分離という生物物理現象を介して形成される。細胞の有糸分裂の際には、このような小器官は核膜の崩壊とともに見えなくなり、有糸分裂が完了すると再び出現する。L Pelkmansたちは今回、キナーゼのDYRK3がこの過程で重要な役割を担っていることを明らかにした。DYRK3の発現は有糸分裂開始時に増加し、「溶解酵素」として働いて、スプライシングに関わる核スペックル、ストレス顆粒、中心小体周辺物質などの膜のない複数種の細胞小器官を溶失させる。有糸分裂の終了時には、APC/C複合体の働きによってDYRK3の分解が起こり、このような細胞小器官の再形成が可能になる。さらに、有糸分裂の際にDYRK3を阻害すると、異常な区画(相分離した融合体)の形成や、紡錘体の過剰な核形成が引き起こされることも明らかになった。
2018年7月12日号の Nature ハイライト
物性物理学:分数熱ホールコンダクタンスを観測
細胞生物学:溶解酵素のDYRK3は液相分離を解消させる
分子生物学:酵母ORC–DNA構造から得られた複製起点選択機構についての手掛かり
天文学:やはり彗星だったオウムアムア
物性物理学:マヨラナフェルミオンによるホール効果の量子化
材料科学:透過と遮断を切り替えられる酸化グラフェン膜を通る水輸送
古気候学:淡水から見た氷期の海洋循環
進化論:公共財ゲームで協力を最大にするには
公衆衛生:大気汚染がアフリカの乳児の死亡リスクを上昇させる
DNA損傷:複製フォークの速度がゲノム不安定性を引き起こす